異国からのリポート(Ⅱ)北インドを旅して

異国からのリポート(Ⅰ)では、いきなりカシミール(シュリナガル)の青年シャクールを話題の中心に、老人問題まで走ってしまった。

 実は首都デリーに2泊して、デリーから飛行機で1時間半のところにシュリナガルはあった。シュリナガルはエベレストに連なる高い山に囲まれたダル湖を擁する。

― 印象Ⅱ ダル湖、水上朝市、蓮の花 ―

 小さなゴンドラのように飾った小舟シカラが、まだ朝日の刺す前のうす暗い湖のもやの中を、蓮などの水草を押し分けるように私たちをのせて進んでいく。朝もやの中から忽然と出現したのは、野菜や果実を思い思いに満載して無数の小舟のひしめいている水上朝市だった。

 湖の水は澄んでおり、市場には多様な鳥たちが思い思いに飛び交っている。蓮はピンクの大きな花をつけ、島のように湖面を占領している。

 トマト、スイカ、なす、かぼちゃ、きゅうり、にがうり、ユウガオ、じゃがいも、にんじん、そして色とりどり大小の花が小舟にあふれている。そこに観光客を乗せたシカラが進入してくる。

 小舟はお互いに物々交換をしたり、売買に熱中している。なかにはお土産用にサフランの香料やお茶を載せている。

 シュリナガルはこの活気ある水上朝市から1日が始まるのだ。

― 印象Ⅲ ゲストハウスとインドカリー ―

 ダル湖から山へせりあがる日当たりの良い地区に私たちが泊ったゲストハウス(民宿)があった。御主人と妻に娘の女子大生が私たちをもてなしてくれた。建物は3階建で、最上段は楼閣造りのシャレたものだった。

 料理はカリーが主だ。カリーと一口で言っても、多様な材料・香料でつくられるとのこと。ベジタブルが主流だが、旬の魚、チキンは使われる。このゲストハウスでは、チキンとオクラのカリーやほうれん草の入った緑色したものなどだ。これに小麦粉で柔らかく焼いた“ナン”と呼ばれるものとライスがつく。ナンを手でちぎって、カリーをつけて食べる。あるいはライスにかけて食べる。

 それに羊の骨付きを甘辛く焼いたものが上級の料理で、生野菜を少々サラダとしてつけるといったものだった。

 さて、印象をまた老人で締めるつもりはないが文字通り老人が印象的なのだ。このゲストハウスの御主人の母親がやってきた。近くに住んでいるようだ。白い衣をまとい、私たちをみると大きく手を広げて笑顔いっぱいで迎えてくれた。すぐ秩子と抱き合った。秩子より10才位上にみえたが75歳。13才で結婚し、16才で第1子を産み、それから学校へ行き、数学の教師になり、校長で終わったという。

 秩子も数学だから“マセマテク”を合言葉にして、また二人で抱き合い、横にいた私まで抱きかかえられてあわてた。

 こうしてシャクール青年、ダル湖の水上朝市、インドカリー、ゲストハウスのインテリおばあちゃんで、カシミールの報告は終わる。(もえぎ新聞 平成26年10月号より 黒岩卓夫)

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