在宅ネット第20回大会in岡山の意義― Narrative Based Care について ―

去る9月14・15日、岡山コンベンションセンターで挙行された岡山大会は、岡山という土地でなければ語れない歴史や文化を生と死やケアの立場から掘り下げようとした意欲的な大会であった。

もちろん表看板である地域包括ケアを地域づくりと明確にとらえた基調講演は、多くの企画の中に盛りこまれていた。

私は第1日目の基調シンポジウムの座長と実践交流会、第2日目のランチョンセミナー(臨床宗教師)と、看取りの3演者の講演を拝聴した。本心は歴史や文化の視点から企画された死生観などを勉強したかったが、それはかなわなかった。

さて、基調シンポジウムで厚労省保険局長の唐沢剛さんは発言のなかで、地域包括ケアシステム構築の基本的要素として、“地域と各人の物語に根ざしたケアを提供する”と言われた。物語とはNarrative-basedのことであり医療の立場からもEBM(Evidence Based Medicine:科学的根拠に基づいた医療)と相並ぶものとしてNBMとして大切にされるようになった。

――それぞれの物語 人・地域――

個人の物語とはその人の人生であり経験であり心情であるとすれば、その地域の歴史や文化をその土台として関心をもつことは不可欠である。

私はかつて看取りを論ずる中で、次のような文言を書いた。医療にはScienceとArtの両面があること。そして広く治療方針の根拠としてEBMとNBMがあること。また生命にしても生物的生命(Biological life)と物語られる生命(Biographical life)が提言されていると。これが福祉・介護の世界に投影するとすれば、地域包括ケア(コミュニティ)づくりの核になるのではないだろうか。

ただ現在の介護保険制度下の事業所で、ひとりのお年寄りに30分時間をかけて、その人の物語(かつての自慢話でよい)を聴く時間があるだろうか。時間がない、同じことしか言わない、聴いてくれない、あきらめるといった悪循環をどうやってたち切ることができるだろうか。「驚きの介護民俗学」を著した六車由実さんも現場にいて聞き取りしながらこのことには気付いている。

また、看取り先生と呼ばれ、臨床宗教師を提言し、3年前自らも癌死した岡部健先生が「看取りは地方文化である」と提言したのも、こうした流れを凝集したものだと思う。

岡山大会は、基調シンポジウムから各テーマ別企画への広がり、とりわけ看取りの企画は、第19回新潟大会の流れを深め、20回大会という節目に相応しいものだったと思う。(もえぎ新聞26年11月号 医療法人社団萌気会 理事長 黒岩卓夫)

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